歯科矯正では、歯並びが元の位置に戻る後戻りを防ぐために「リテーナー」と呼ばれる保定装置を使用します。
一般的に、リテーナーの装着期間は2~3年程度であり、長い治療期間中にリテーナーの装着不足が原因で後戻りを引き起こすことも少なくありません。
この記事では、後戻りを防ぐためにリテーナーの適切な装着期間や使用方法、注意点について詳しく解説します。
目次
矯正後のリテーナーを使う期間
歯列矯正をした後は、歯が不安定な状態で元の位置に戻りやすいため、リテーナーを使用して保定治療をします。
保定期間には個人差がありますが、一般的に2~3年が目安です。後戻りを防ぐために、医師の指示通り装着期間を守るようにしましょう。
2~3年の保定期間が必要になる
歯科矯正では、動的治療(矯正装置で歯を動かし、歯並びを整える)と保定治療(整えた歯並びを固定させる)を行います。
保定期間は歯の状態によって個人差があります。一般的には2〜3年で、矯正治療の期間と同程度必要になるでしょう。
後戻りの主な原因は「リテーナーの装着不足」であり、決められた期間を守って装着ができず、後戻りにつながるケースも少なくありません。
長い時間と費用をかけて手に入れた理想の歯並びを維持するためにも、歯科医師の指示に従ってリテーナーの装着期間を守ることが重要です。
安定したら徐々に装着時間を短くする
矯正治療で整えた歯列は、リテーナーを装着しなければ元に戻ってしまいます。
矯正治療の直後は歯が不安定で動きやすく、1日20時間以上の装着が必要です。食事と歯磨き以外の時間は常に装着するようにしましょう。
歯が安定してきたら、少しずつ装着時間を短くし、最終的には就寝時のみ装着することが一般的です。
ただし、自己判断で装着時間を短くしてはいけません。
基本的には、歯が安定してくると通院の間隔が空きますが、必ず定期的な診療を受け、歯科医師が指示したタイミングでリテーナーの装着時間を短くするようにしましょう。
保定期間後も装着するのがおすすめ
歯の状態が安定してきたら、リテーナーの装着時間が徐々に短くなり、保定期間が終了します。
しかし、保定期間が終了した後も歯は自然と少しずつ動くため、後戻りを防ぐためには継続してリテーナーを装着した方がよいでしょう。
日常生活の中には、歯並びに影響を与えるさまざまな要因があります。噛み癖や舌癖といった習慣や、親知らず、歯周病などがあると、後戻りのリスクが高まります。
夜間のみ装着するなど、可能な限り装着を続けることで後戻りを防ぎ、きれいな歯並びを維持できるでしょう。
矯正後の後戻りを防ぐポイント
矯正治療後に後戻りを起こす原因のほとんどは「リテーナーの装着不足」です。
ほかにも、口腔習癖や親知らずは歯に強い力を与えるため、歯並びに影響を及ぼします。
原因と対処法を理解し、改善することで後戻りを予防しましょう。
装着時間を必ず守る
後戻りの原因は「リテーナーの装着不足」がほとんどであるため、指示通りにリテーナーを装着することで、後戻りのリスクを軽減できるでしょう。
保定期間は矯正期間と同等の期間が一般的であり、1日20時間以上の装着が必要です。
取り外しが可能なタイプのリテーナーは、食事や歯磨きの際は取り外し、それ以外の時間は装着するのが基本です。
特に、矯正治療終了後の約半年間は、歯が不安定な状態で後戻りしやすいため、リテーナーの装着を怠ることなく、指示通り装着時間を守りましょう。
口腔習癖や外部からの圧力に注意する
以下のような口腔習癖は、歯を動かして後戻りの原因になるため、対処法で改善しましょう。
・噛み癖(歯ぎしりや食いしばり)
就寝中に無意識に起こるため、マウスピースの使用など適切な処置を受ける。
・舌癖(舌で歯を押し出す)
MFT(口腔筋機能療法)といった口周りの筋肉を鍛えるトレーニングを行い、舌を正しい位置にする。
また、以下のような外部から圧力がかかるような癖も歯並びに影響するため、日常生活の中で注意しましょう。
- 噛む力が強い
- 口呼吸
- 唇や爪を噛む
- 片側に偏って噛む
- 頬杖をつく
- うつ伏せや横向きで寝る
親知らずの抜歯を検討する
親知らずは、ほかの歯を押して生えてきたり、歯を並べるスペースを狭めたりするため、歯並びに悪影響を及ぼします。
そのため、親知らずがある場合は、矯正治療前に抜歯を検討しましょう。
親知らずが生えた状態で矯正治療をしても、歯並びが変わってしまう可能性があります。また、親知らずが奥にあることでほかの歯が動かず、矯正治療の妨げになるかもしれません。
もし、矯正治療後に親知らずが生えてきた場合は、ほかの歯は親知らずが生える力で押されて動いてしまいます。
矯正治療後に後戻りが起きた際は、親知らずの抜歯や再矯正をするべきか歯科医師と相談しましょう。
矯正後にリテーナーをサボったらどうなる?
保定期間は長期にわたるため、リテーナーをつけ忘れたり、面倒でサボってしまったりすることもあるでしょう。
リテーナーをサボると後戻りが起こる可能性があり、再度矯正治療が必要になるかもしれません。
再度装着した際に強い痛みを感じた場合は、歯科医院で診療を受けましょう。
装着したときに痛みを感じる
リテーナーをサボった後の痛みは後戻りのサインです。サボっていた間に歯が元の位置に戻ろうとして動いてしまい、リテーナーが歯列に合わなくなった証拠といえるでしょう。
特に、矯正装置を外してから半年程度は歯が安定しないため、1日サボるだけでも違和感や軽い痛みを生じる可能性があります。
軽い痛みであれば、リテーナーを再度装着することで後戻りの進行を防げるでしょう。
ただし、長期で装着を怠ると、痛みを感じるだけでなく、リテーナーが入らない場合もあるため早めの受診が必要です。
リテーナーが入らなくなる可能性がある
リテーナーの装着を長期間怠ると、後戻りが進行してリテーナーが歯列に合わなくなり、入らなくなってしまう恐れがあります。
1ヶ月以上リテーナーを装着しなかった場合、再度装着しても強い痛みを感じたり、装着時にリテーナーが浮いてしまったりして、正しい装着ができないかもしれません。
無理にリテーナーを装着することで、歯や歯茎を傷つけ、さらに歯並びを悪化させる可能性があります。
リテーナーが入らなくなった場合は、調整や新たにリテーナーを作り直す必要があるため、速やかに歯科医院を受診しましょう。
作り直しが必要になる
リテーナーの装着を長期間怠ると歯の後戻りが進み、調整で対応できない場合があります。その場合は、新たにリテーナーの作り直しが必要になります。
作り直しにかかる費用と期間は、歯科医院やリテーナーの種類によって異なるため、歯科医師と相談するとよいでしょう。
一般的に、費用は5,000円~5,0000円、期間は2週間~1ヶ月程度です。
作り直す期間はリテーナーを装着できないため、さらに後戻りが進行しないよう、応急処置をすることもあります。
場合によっては再矯正が必要になるため、追加費用や時間がかからないよう、リテーナーをきちんと装着しましょう。
矯正後に使うリテーナーの種類
リテーナーは大きく2つに分類されます。一つは、自分で取り外しができる「可撤式リテーナー」、もう一つは自分で取り外しができない「固定式リテーナー」です。
歯並びや口内の状態、生活習慣を考慮し、歯科医師と相談して選択しましょう。
ここでは、広く使用されている種類のリテーナーについて解説します。
プレートタイプ
プレートタイプは、プラスチック製のプレートに金属製のワイヤーがついており、ワイヤーを自分の歯に引っかけて固定します。
【メリット】
・歯列全体をカバーするため、保定機能が優れている。
・取り外しが可能なため、食事や歯磨きがしやすい。
・歯ぎしりや食いしばりに強く、壊れにくい。
【デメリット】
・歯の表側にワイヤーが通るため、目立ちやすい。
・装着初期は違和感を生じることがある。
プレートタイプの代表的なものとして、ベッグタイプ(歯列全体を抑える)とホーレータイプ(前歯のみ部分的に抑える)が挙げられます。
ベッグタイプ
プレートタイプのうちの一つであるベッグタイプはよく使用されており、抜歯を伴う矯正治療後の後戻り防止に向いています。
ワイヤーが表側の歯列全体を取り囲んで締めつけ、裏側からはプラスチックのプレートが歯列を抑えることで、全体の歯並びを固定します。
しかし、口を開けた際にワイヤー部分が目立つため、見た目を気にする人もいるでしょう。
現在は金属製のワイヤーのほか、樹脂製の透明のワイヤーを採用している矯正歯科もあります。選択可能かどうか、相談するとよいでしょう。
装着して最初のうちは違和感を生じる人もいますが、使っていくうちにほとんどの人が慣れます。
マウスピースタイプ
マウスピースタイプは、透明の素材で作られたリテーナーで、歯列全体を覆って歯を固定します。
【メリット】
・取り外し可能なため、食事や歯磨きがしやすい。
・素材が透明で、装着していてもほとんど目立たない。
・歯全体を覆うため、保定機能が優れている。
【デメリット】
・ほかの種類のリテーナーに比べて素材の耐久性に劣る。
・歯ぎしりや食いしばりが強い人は、割れる可能性があるため注意が必要。
・上下の歯が触れ合わないため、咬み合わせの調整ができない。
リテーナーを使用するときの注意点
リテーナーは非常に壊れやすいため、使用する際は「紛失」や「破損」といったトラブルに注意を払う必要があります。
また、保定期間中はきれいな歯並びを保つために、定期的に歯科医院を受診して、歯並びやリテーナーのチェックを受けるようにしましょう。
飲食をする時は外す
取り外しが可能なプレートタイプやマウスピースタイプのリテーナーは、飲食の際は必ず外すようにしましょう。
装着したまま飲食をした場合は、以下のようなリスクがあります。
- 歯とリテーナーの間に食べた物が詰まり、虫歯や歯周病の原因になる
- コーヒーやカレーなどの色が濃い食べ物は、リテーナーの着色の原因になる
- おせんべいやリンゴなどの硬い食べ物、キャラメルやガムなどの粘着性のある食べ物、熱い飲み物は、リテーナーの破損や変形の原因になる
装着したまま飲めるものは、冷水、常温の水、無糖の炭酸水のみです。
専用のケースを常に持ち歩く
飲食をする間は、リテーナーを外す必要があります。外した際は、リテーナーの紛失や破損を防ぐために、必ず専用のケースを持ち歩くようにしましょう。
外食する際にケースを携帯せず、リテーナーをティッシュなどに包んで保管すると、破損の原因になったり、忘れた場合はお店で廃棄されてしまったりすることもあるため注意が必要です。
リテーナーは自分の歯に合うように作られているため、少しの破損でも整えた歯並びに影響を及ぼす可能性があります。
常にケースを持ち歩き、外すときには必ずケースの中で保管するようにしましょう。
毎日洗浄をする
リテーナーを洗浄せずに使い続けた場合、雑菌や汚れがたまって匂いや歯周病の原因になります。リテーナーを清潔に保つためにも、毎日の洗浄を心がけましょう。
リテーナーの洗浄には以下の方法があります。
水道水で洗う
熱湯で洗うと変形する可能性があるため、水道水で優しく洗う。
リテーナー専用の洗浄剤で洗う
入れ歯用の洗浄剤は、リテーナー専用の洗浄剤と成分が異なり、種類によっては破損につながる恐れがあるため使用を避ける。
毛先がやわらかい歯ブラシを使う
毛先が硬いタイプや普通のタイプはリテーナーを傷つけてしまう可能性があるため、毛先がやわらかい入れ歯用の歯ブラシがおすすめ。
自分に合ったリテーナーを選ぶ
通常、リテーナーの種類は、矯正器具が外れる前に歯科医師と相談しながら決めることがほとんどです。
生活習慣や口腔内の状態、治療後の歯並びの安定性を考慮して選択しましょう。
見た目を重視する場合はマウスピースタイプ、咬み合わせを調整したい場合はプレートタイプといったように、患者の症例や希望に合わせて歯科医師が適切なリテーナーを選択します。
リテーナーは長期間使用するため、装着を継続できるかどうかが重要です。
自分のライフスタイルに合ったリテーナーを選択し、できるだけ長くきれいな歯並びを維持しましょう。
来院時は保定装置を持参する
保定期間中は定期的な通院が必要です。リテーナーは長期間にわたって装着するため、歯並びに合わせて調整する必要があります。定期受診の際は、リテーナーを必ず持参しましょう。
また、リテーナーは壊れやすく、少しのワイヤーのゆがみやプラスチックの傷やヒビでも、歯並びに影響が出る可能性があります。受診の際は、リテーナーに異常がないか確認してもらいましょう。
リテーナーの状態によっては、修理や交換が必要になります。リテーナーの異変や、装着時に違和感が生じた際は早めに受診し、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
矯正後のリテーナーに関するよくある質問
保定治療は、矯正治療できれいに整えた歯並びを維持するための大切な期間です。
長期間の治療中は「いつまでリテーナーをつけるのか?」といった疑問を抱える人も少なくありません。
ここでは、リテーナーの装着期間や装着時間に対してよくある疑問について解説します。
リテーナーを夜だけするのは何年くらいですか?
一般的に、終日装着する期間を終えると歯並びが安定してくるため、装着時間を短くすることがほとんどです。最終的には就寝時のみ装着するようになります。
就寝時のみの装着期間は個人差があり、歯の状態によって異なりますが、最低でも1年間は装着した方がよいでしょう。
保定期間は長ければ長いほど効果があり、整った歯並びを維持するためには、就寝時のみの装着を生涯続けることが推奨されています。
装着が就寝時のみになった際は、装着忘れや紛失に注意し、リテーナーを清潔に保管しましょう。
リテーナーを数時間外すとどうなりますか?
矯正治療を終えた後、半年程度は歯が不安定な状態で後戻りしやすいため、食事と歯磨き以外の時間はできる限りリテーナーを装着します。
症例によって個人差はありますが、3時間以上リテーナーを外すと歯並びが変化し、再度装着した際に窮屈さや歯がリテーナーの形に戻されるような違和感を生じることがあります。
基本的に、歯科医師の指示に従って終日の装着を続けると、歯並びは少しずつ安定してくるため、数時間外して再度装着したときの違和感はなくなってくるでしょう。
まとめ
リテーナーには、矯正治療後の美しい歯並びを安定させ、後戻りを防ぐ重要な役割があります。
保定期間中は定期的に受診し、歯並びとリテーナーのチェックを受け、適切な処置を受けるようにしましょう。
リテーナーの種類や管理方法、トラブルの際の対処法など正しい知識を身につけ、決められた装着期間を守ることで、手に入れた理想の歯並びを維持できるでしょう。
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