こんにちは。兵庫県宝塚市にある医療法人社団 宝塚ライフ歯科・矯正歯科です。
口腔外科とは、お口の中だけでなく、顎や顔面も含めた症例を対象とする専門領域です。一般歯科では虫歯や歯周病など歯に焦点をあてた治療がメインですが、口腔外科は骨や関節、粘膜までを対象とします。
今回は、口腔外科での治療対象となる症状や疾患について詳しく解説します。
目次
口腔外科とは
お口のトラブルの中には、虫歯や歯周病のように歯の治療で済むものもあれば、顎の骨・粘膜・神経など「歯以外の構造」に問題が起こるケースもあります。そうした複雑な症例を専門的に扱うのが「口腔外科」です。ここでは、その役割や対象範囲、医科との関わりまで詳しく解説します。
口腔外科の基本的な役割
口腔外科とは、口の中や顎、顔面、さらにはそれらに隣接する組織に生じる病気や外傷を、手術や専門治療によって治す診療科です。歯や歯ぐきだけでなく、舌・頬・唇・顎関節・骨・筋肉・神経なども診療の対象となります。
咀嚼(そしゃく)・発音・表情など、日常生活に欠かせない機能を守ることが口腔外科の目的です。
また、治療後の「機能回復」や「見た目の改善」も重視され、単に病変を除去するだけでなく、生活の質(QOL)を高める医療を行います。
専門領域と対象範囲
日本口腔外科学会によると、口腔外科は「口腔・顎・顔面および隣接組織の先天的・後天的疾患を扱う分野」と定義されています。その範囲は非常に広く、難抜歯や顎関節症、嚢胞・腫瘍、口腔がん、顎変形症、外傷、先天性異常(口唇裂・口蓋裂)などが含まれます。
また、糖尿病・心疾患などの全身疾患を持つ方への安全な歯科治療や、手術後の機能回復・予防医療も重要な役割です。
口腔外科と一般歯科の違い
「口腔外科と一般歯科の違いがよく分からない」という患者さまは少なくありません。どちらもお口の中を診る科ですが、治療の目的・扱う症例・設備や体制に明確な違いがあります。
ここでは、一般歯科との比較を通して、口腔外科の特徴をわかりやすく整理します。
治療の目的と役割の違い
一般歯科と口腔外科は、どちらもお口の健康を守る診療科ですが、目的が異なります。一般歯科は、虫歯や歯周病などの歯の病気を治し、口腔内を健康に保つことを目的としています。
一方、口腔外科は、口腔・顎・顔面に生じる外科的疾患の診断と治療を専門に行う分野です。
治療内容の違い
一般歯科では、虫歯治療、歯周病治療、詰め物・被せ物の製作、入れ歯、クリーニング(PMTC)、ホワイトニングなどが主な診療です。一方、口腔外科では、以下のような外科的処置が中心となります。
- 難抜歯(神経に近い親知らずの抜歯など)
- 顎関節症や顎変形症の外科的矯正
- 口腔粘膜疾患・腫瘍・嚢胞の摘出
- 口唇裂・口蓋裂の形成外科
- 顎骨骨折や外傷の整復
- インプラント埋入や骨造成手術
- ドライマウス・神経性疾患の治療
これらの治療は、CT撮影・全身麻酔・縫合・骨再建など、高度な外科的知識と設備が必要です。
対応できる症例と設備の違い
一般歯科では、基本的に局所麻酔による外来処置が中心です。
一方、口腔外科では、全身麻酔や静脈内鎮静法を用いた手術が可能であり、医科との連携体制や手術設備を整えています。さらに、全身疾患をもつ患者様(心疾患・糖尿病・抗血栓薬服用中など)にも対応できるよう、術前検査や入院管理を行う場合もあります。
このように、治療範囲・リスク・安全管理体制において、両者には明確な違いがあります。
口腔外科で治療する症状・疾患
口腔外科で治療する症状・疾患は多岐にわたります。以下、代表的なものをご紹介します。
親知らず
親知らずの抜歯は一般的な歯科治療で行われますが、親知らずの位置や生え方によって、通常の抜歯方法では難しい場合があります。たとえば、親知らずが横向きに生えている場合や大量の出血が予想される場合などは、専門的な技術が必要です。このように、複雑でリスクが大きい親知らずの抜歯は、口腔外科の受診が必要となることが多いのです。
口腔外科の専門医は、親知らずの抜歯について多くの経験を積んでいます。親知らずの抜歯は、歯茎を切開する・縫合するなど、特殊な技術が必要となるため、親知らずが横向きに生えている場合の抜歯は得意です。
さらに、親知らずが下歯槽神経に近接している場合、神経麻痺を引き起こすリスクがあるため、通常の歯科医院では抜歯をさけ、専門的な治療を行う大学病院の口腔外科を案内されることがあります。このように、親知らずの抜歯は、親知らずの位置や状況により、一般歯科から口腔外科へ治療が移ることがあるのです。
口腔粘膜疾患(口内炎・白板症・紅板症など)
口の中はさまざまな細菌が生息しており、体調不良やストレス、栄養不良などによって免疫力が下がると、口内炎や粘膜炎など、お口の中の粘膜が炎症を起こすことがあります。最初に薬物療法で治療を試みますが、再発を防ぐためには日頃の口腔ケアが重要といえるでしょう。
また、口腔内の粘膜疾患はほかにも存在します。たとえば、通常赤色である粘膜が白く変色する「白板症」などです。白板症は放置すると、がんへ進行する可能性がある前癌病変であり、早期発見が必要です。
嚢胞・腫瘍・口腔がん
口の中や顎の骨には、嚢胞(袋状の病変)や腫瘍(できもの)ができることがあります。ほとんどは良性ですが、放置すると感染や変形を起こしたり、まれに悪性化する場合もあります。
また、舌や歯ぐき、頬の粘膜に発生する口腔がんは、早期発見であれば小規模手術で治療が可能ですが、進行すると咀嚼・発話・嚥下機能に影響します。
定期的な検診や、2週間以上治らない潰瘍・しこりがある場合は、速やかな診察が必要です。
口腔がん
口腔がんとは、お口の中やお口の周辺部分で発生するがんのことで、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口唇がんなどがあります。日本における口腔がんの発生頻度は全てのがんの約2%で少ないものの、頭頸部のがんの中では最も多い疾患です。
口腔がんの症状は、口内に潰瘍のように掘られた部分ができる・周囲が硬くなる・赤くただれる・おできのように膨らむ・部分的に白斑のように白くなるなど多種多様です。しこりが見られることも共通の症状です。これらの微妙な変化を早期にとらえることで、小規模な手術で治療が可能となるでしょう。
喫煙や不適合な入れ歯による慢性的な潰瘍も、口腔がんを引き起こしやすいといわれていますが、具体的な原因ははっきりと分かっていません。
口腔がんの治療は、まず手術が第一選択です。腫瘍の大きさによっては、局所だけでなく、頸部のリンパ節も含めて拡大切除することもあるでしょう。口腔がんでは、切除部位が顎の骨、顔面、頸部にまで及び、咀嚼、嚥下、言語障害、顔貌の変形などの後遺症を残すことがあります。近年では、顕微鏡を用いた骨や皮膚、筋肉の移植による再建手術の進歩により、後遺症はかなり軽減されています。
しかし、お口の機能である発語、咀嚼、嚥下は複雑で、微妙な協調動作であり、完全に回復することは難しいです。進行してからの発見が遅く、大きながんになるほど手術が厳しくなるでしょう。
手術以外の選択肢に放射線治療があります。エックス線によるもので、抗がん剤と組み合わせて行います。
ただし、機能の温存は可能ですが、副作用が強くでることがあるでしょう。
顎関節症
顎関節症とは、硬い物を噛む・大きなあくびをする・歯ぎしりや食いしばりの癖があることなどにより、顎関節や顎関節の周囲の筋肉に痛みを感じる状態のことです。これらの行為により、顎関節に負荷がかかり過ぎることで顎関節症が起こります。
顎関節症の症状は、顎を動かすときに痛みがある・お口を大きく開けることができない・かみしめるときに顎がカクつくなどがあります。
顎関節症の治療は、筋肉だけが痛む場合は、筋肉のマッサージや温めることで改善することがあるでしょう。痛みが治らない場合や関節部分に痛みがある場合は、マウスピースを装着することで改善可能です。マウスピースは、顎の動きを制限し、顎関節の負担を軽減してくれるでしょう。
しかし、上記の治療でも改善しない場合があります。そのような場合は、MRIを用いて顎関節の詳細な検査を行います。
MRIは、顎関節の内部構造を詳細に視覚化することができ、痛みの原因を特定するのに非常に有効です。痛みの原因が特定できない場合や症状が重篤である場合は、顎関節の手術を行うこともあります。
噛み合わせの異常
噛み合わせの異常は、口腔外科で治療する主要な疾患のひとつで、受け口や顎の変形、そして骨格的な問題が原因で起こることがあります。
矯正治療だけで対応できない場合、手術が必要となることもあるでしょう。手術では、顎の骨を切って噛み合わせを正常な位置に調整し、チタン製のプレートなどを用いて固定します。手術は口の内側から行われるため、外からは傷跡が見えないのが特徴です。
口蓋裂の患者さまの場合、上顎の骨の成長が遅れるために受け口になる可能性が高いです。そのため、口蓋裂の患者さまは、成長したあとに手術を受けることがあります。
インプラント
口腔外科では、歯が欠損した部分に対する治療として、インプラント治療があります。インプラント治療は、人工の歯根(主にチタン製)を欠損部に埋入し、人工の歯根の上に人工の歯を装着する方法です。ブリッジのように両隣の健康な歯を削る必要がなく、入れ歯のような違和感も少ないため、自然な食事が可能で、見た目の美しさも保つことができます。
インプラント治療では上顎洞への迷入や神経損傷など、さまざまなリスクが存在します。そのため、事前に歯科用CTで患者さまの口腔内の状態をより詳しく把握し、より安全で確実な治療を行う必要があるのです。
インプラント治療で起こるトラブルの多くは、適切な診断、手術、管理が行われていないケースが多いと考えられています。また、インプラントを埋入するためには、十分な骨の量が必要です。骨の量が不足している患者さまに対しては、骨を増やすための手術も行っています。
外傷
口腔外科で対応する疾患のひとつに、外傷があります。外傷は、交通事故、スポーツ事故、転倒や喧嘩などが原因です。
外傷では多くの患者さまが救急外来を受診します。具体的には、上顎骨折、下顎骨折、頬骨弓骨折、眼窩底骨折、これらが複合した複雑な骨折にも対応します。
頭頸部領域には、顔の知覚や運動をつかさどる神経、脳に向かう血管など重要な組織が密集しているため、頭頸部領域の解剖を深く理解した経験豊かな医師が必要です。
一般的に、上顎や下顎の骨が折れた場合、チタン製のプレートで折れた部分を整復します。
しかし、一時的であるため、約1年後に再度手術を行いプレートを抜去する必要があります。
ドライマウス
口腔外科では、ドライマウス(お口の乾燥)の治療も行っています。
ドライマウスは、高齢者の間で増加傾向にあります。特に、難治性のシェーグレン症候群といった特殊な疾患で引き起こされることが多いです。シェーグレン症候群とは、唾液や涙の分泌が低下し、乾燥を引き起こす疾患です。また、唾液腺の炎症や腫瘍など、口腔乾燥の原因となる可能性がある病気にも対応します。
ドライマウスの治療は、お口の健康を維持し、食事や話すなどの日常生活を快適にするために重要といえるでしょう。
口蓋裂
口腔外科で治療する先天性疾患のひとつに、口蓋裂があります。口蓋裂は、頭頸顔面領域の先天性疾患の中で最も頻度が高いものとされています。
口蓋裂は、上顎(口蓋)の一部が欠損し、口と鼻が通じている状態のことです。口蓋裂により、特徴的な開鼻声(鼻から抜けるような声)が生じます。そのため、生後1〜2歳で形成手術を行い、口と鼻の交通を閉じることにより開鼻声を改善します。
しかし、この部分には骨や歯が存在しないため、審美的・機能的な問題が引き続き存在することとなるでしょう。特に、前歯周辺は見た目を気にする患者さまも多いです。そのため、成長に伴い、義歯の装着やインプラントの埋入などを検討されます。
義歯やインプラント治療を行いやすくするために、腰(腸骨)から骨、または骨髄を採取し、上顎の骨の間隙に移植する処置もあります。
費用・保険について

口腔外科は「手術」というイメージが強いですが、実際には多くの治療が健康保険の対象となります。
ただし、治療内容によっては自由診療(自費)となるものもあります。ここでは、保険適用の範囲と自費治療の目安を整理します。
保険が適用される治療
口腔外科で扱う多くの疾患は、保険診療で行うことが可能です。親知らずの抜歯、嚢胞摘出、腫瘍の切除、外傷の縫合や骨折治療、顎関節症の治療、唾液腺疾患、ドライマウスの薬物療法などがその一例です。
治療費は内容によって異なりますが、親知らずの抜歯で数千円程度、嚢胞摘出や外傷処置では1〜3万円前後(保険3割負担の場合)が目安です。
自由診療となるケース
機能回復や審美性を目的とした治療は、保険が適用されないことがあります。代表的なのがインプラント治療で、1本あたり約30〜50万円程度が一般的です。
また、骨造成(骨を増やす手術)や審美目的の形成手術も自費扱いになります。これらの治療を行う際は、事前に治療計画と見積もりを提示し、費用・期間・リスクを丁寧に説明します。
患者様の声
自身の定期検診で通っていて、娘の矯正治療も始めることにしました。納得できるまで3回もカウンセリングをしてくださって、気になることもわかるまで説明してくれました。よりよい提案もしてくれて、本当に親身になってくれます。これからの治療が楽しみです。
治療で大変お世話になり、今は定期検診に通わせていただいています。院内のスタッフさんは、皆様とても優しく、歯科恐怖症でとても緊張する私でも定期的に通えています。予約が取りやすく、新規でもネットで取れるのですごく便利です。宝塚ライフ歯科さんにはとても感謝しています。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします!
まとめ
口腔外科とは、お口の中だけでなく、顎や顔面など広範囲の症例に対応した専門領域のことです。
一般歯科では、虫歯や歯周病治療、PMTC(クリーニング)など、歯に焦点をあてた治療をメインに行っています。一方、口腔外科では、顎の骨や関節、粘膜などさまざまな疾患に対応しています。手術が必要となる疾患も口腔外科が対象です。
口腔外科で行う治療は、一般歯科よりも複雑でリスクが伴いやすいため、知識や技術が豊富な歯科医師による治療が重要です。複雑に生えている親知らずの抜歯やインプラント治療などを検討している方は、口腔外科が入っている歯科医院を選びましょう。
口腔外科の治療を検討されている方は、兵庫県宝塚市にある医療法人社団 宝塚ライフ歯科・矯正歯科にご相談ください。
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奥村亮司


















